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華生たちの殺伐としたやり取りは周囲に気づかれることなく、幸せに溢れた式が滞りなく進行していく。
テーブルの配置は、円卓に鑑田社長夫妻、その息子夫婦、鑑田社長夫人の親戚数人、そして一彬だった。同じ鑑田の親戚とはいえ、社長夫人の親戚に挟まれた一彬の場の浮き具合は甚だしい。
乾杯が終わり、豪華なフレンチがテーブルに載せられていく。わりと食べ慣れている鑑田家の者は、舌鼓もそこそこに歓談を楽しみ始める。
「ところで、一彬さん、でしたかな?」
一彬の隣に座っていた社長夫人の兄が、鴨肉のローストを切っていた彼に声を掛けた。一彬が手を止めて答える。
「はい、嶋木一彬と申します」
「柊聖くんのお嫁さんのお兄さんでしたよね」
「その通りです」
華生は愛想も無く聞かれたことにしか答えない兄が気掛かりで、内心食事どころではない。
「こんなに可愛らしい妹さんがお嫁に行ってしまって淋しいでしょう」
夫人の兄は酒がまわっているのかあまり空気を読まずにズケズケと口を出す。
「……そうでもありませんよ」
一彬はそんなことで顔色一つ変えないことは分かっている。しかし華生も公の場の手前、少し話に乗ってやることにした。
「ひ、ひどいわ兄様!」
夫人の兄の妻が朗らかに笑う。ふっくらした風貌で、いかにも有閑マダムといった印象だ。
「まぁまぁお兄さんったら意地が悪い。お兄さまは失礼ですが独身でしたわね? 妹さんが柊聖くんと一緒になってるし、お兄さまもそろそろ幸せに……とは思いませんの?」
一彬はしばらくむっつり黙っていたが、やがていつもの厳格な調子で口を開く。
「……幸せ……ね」
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