七章

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「……っ……!」  よく、ここまで我慢できたと彼女は自分を褒めた。華生の両の瞳からは止めどなく涙が溢れ出てくる。 兄様は、卑怯だ……!  今さらのようにそんな戯言を言って、人を喜ばせて。  私は返事をすることすら、叶わないのに。  本当は、兄様に奥さんだなんて、考えたくもない。 けれど奥さんである私は嫉妬すら出来ない。 「早く、止まってよ……!」 「鑑田華生」は、夫、柊聖の妻として嶋木家に今までの恩を返すんだ。こんな所に閉じこもって、泣いてる場合じゃない……!
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