七章

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気合いで溢れ出る涙を堰き止め、華生は鏡の前に立って目の周りに散らばったパールをファンデーションで誤魔化す。 目元が黒いのを、指摘されるかもしれない。 ポーチの中の化粧道具を駆使して何とか見れるくらいにはできたつもりだが、敏感な女性は気付くだろう。 コンタクトが外れたと言うしかない。使ったことないけれど。 華生は諦めて化粧室を出る。すると目の前に大きなネズミが飛び込んできた。 「随分長くお花を摘んでいたね」 セクハラもここまでくると清々しい。露骨に笑顔が気持ち悪いと思ったら、人の気配が感じられない。 「律儀に待っていらしたの? お花が欲しいなら先ほどのブーケトスに参加なさったらよかったのに」 病的に可愛らしい姪の皮肉も、彼にとっては靴を引っ掻かれたくらいのダメージしかないみたいだ。 「口が達者になったね、華生ちゃん」 「あの写真を送ったのは、叔父さん?」 「何の写真かな?」 すっとぼけた顔が憎らしい。 「まぁ……いいです。兄様が誰とホテルに入って何をしようが、私に口を挟む用事はありませんから」
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