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こってり絞られた華生が鑑田を見上げる。彼はその場に放心したように立ち尽くしている。
「あの、柊聖さん? 本当にごめんなさい……」
華生が遠慮がちに鑑田のコートを摘むと、彼は「あ、あぁもういいよ」と気の抜けた返事をした。
「華生さん、華生さんが使ってる香水ってさ……」
「? 普通の香水ですよ」
華生はきょとんと小首を傾げる。鑑田は慌ててその場を取り繕った。
「あ、うんそうだね。ごめんね突然、帰ろうか」
鑑田が華生の手を握ると、ふわりと甘い花の香りが、風に乗って仄かに薫る。
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