七章

20/20

1329人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
こってり絞られた華生が鑑田を見上げる。彼はその場に放心したように立ち尽くしている。 「あの、柊聖さん? 本当にごめんなさい……」 華生が遠慮がちに鑑田のコートを摘むと、彼は「あ、あぁもういいよ」と気の抜けた返事をした。 「華生さん、華生さんが使ってる香水ってさ……」 「? 普通の香水ですよ」 華生はきょとんと小首を傾げる。鑑田は慌ててその場を取り繕った。 「あ、うんそうだね。ごめんね突然、帰ろうか」 鑑田が華生の手を握ると、ふわりと甘い花の香りが、風に乗って仄かに薫る。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1329人が本棚に入れています
本棚に追加