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八章
「もう、柊聖さんも卒業ですね」
華生は卒論発表会から帰ってきた鑑田のコートを受け取りながら言う。
「うん、華生さんの本当の夫になるまであと少しだ」
鑑田は玄関で華生の頬にアルコールの香りのキスをした。彼はお酒を飲むと若干場所を弁えなくなる癖がある。
「もう! 部屋に戻ってからにしてください」
華生が軽く夫を窘めながら部屋に連れて行きドアを閉めてしまうと、鑑田が華生の左手の薬指を取った。
ゆっくりと、小ぶりな紅い石を撫でながら呟く。
「ようやく、結婚指輪を嵌めてあげられそうだね」
「あの、私急ぎません。お仕事が始まってから、落ち着いてからでいいですよ」
鑑田が嬉しそうに頬を緩ませた。
「はいはい、華生さんはしっかりしてるよね。そういう所、俺は好きだよ」
鑑田が華生の薬指に唇を寄せ、軽く口付けると、今度は唇を優しく喰んできた。
あ、始まる……
華生が部屋の照明のスイッチを叩く。それを合図に、鑑田は妻をベッドの上に押し倒した。
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