八章

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「じゃあ、()ってくるから」  スーツにネクタイを締めた鑑田は、見慣れないせいかいつもより凛々しく見える。 「気をつけて()ってきてくださいね」 「留守番は任せたよ、華生さん」  多忙な鑑田の両親も息子の晴れ姿のために休みを取ったらしい。三人とも笑顔で車に乗って大学に向かった。 「柊聖さん、首席で卒業みたいですね」 「えぇ、さすが未来の社長ですね」  ハウスキーパーのおばさんはうっとりと呟く。今日は鑑田の大学の卒業式だ。彼らが帰宅したら、家族四人で食事に行くことになっている。  お祝いを用意したけれど、どこかに隠してびっくりさせようかな。  華生は珍しく悪戯心を起こし、うきうきとほおを緩ませる。 「お庭、私が掃きますね!」  玄関脇のロッカーからホウキを取り出し、華生は庭に駆けていった。
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