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「いくら恨んでも、かまいませんから」
華生が、シートベルトの留め具を押して外す。
「あ! ちょっと!」
車のドアが勢いよく開いて、華生が飛び降りる。笹野の娘が手を伸ばすが間に合わない。彼女はそのまま素早く体当たりしてドアを閉めた。
「は、華生さん! 待ちなさい!」
慌てる笹野の後ろの車がしつこくクラクションが鳴らす。笹野がやむなく車を発進させている間に、華生はがむしゃらに歩道を疾走した。
——涙を流す猶予すら許されなかった八年前も、今日まで兄様たちに護ってもらったことも、生涯私が忘れることはない!
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