八章

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 細い道を進まなきゃ、なるべく車が入り込めない、ビルの隙間みたいな。  急に車から飛び出して靴も履かずに走っている女性に、行き交う人々は奇異な目を向けているが彼女は構わない。  たまたま入った高層ビルの間で腐臭が鼻を刺す。不法投棄らしき生ゴミの袋が破れて中身が飛び出たのを、カラスが突いていた。  華生が一歩踏み込むと、カラスはきまり悪そうにどこかへ飛び立つ。  ——私も随分厚かましくなったものね。  彼女は一分の躊躇も見せず、散らかったゴミを踏みつけた。  
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