八章

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「痛っ!」  ついに腐ってゴミすらも足蹴にした華生の足の裏に激痛が走る。ヒョイと足を持ち上げて見ると、無残にタイツが破れ足は剥き出しになっており、真っ黒な足の裏にプラスチックの破片が刺さっていた。 スニーカーを履いていれば、こんなことにはならなかったのに。  冷静になって見渡せばここは馴染みのない街で、人通りは多いがどこに何があるのかわからず、案内板もざっくりしすぎて参考にならない。スマートフォンは今頃砕け散っているし、鞄も笹野の車に残して来たから華生は実質無一文だ。  タクシーを拾って、家まで連れて帰ってもらおう。  幸いにも、路肩で空のタクシーの運転手が暇そうに煙草を吸っていたのを見つけた。華生は足から破片を抜くと、後部座席のドアを開けて急いで乗り込む。 「すみません、財布を落としているので自宅まで帰ってお金を払いたいのですが、自宅がおそらくここから一時間くらいかかる場所なんです。構いませんか?」 「一時間ですか……まぁいいでしょう」  運転手は気怠そうに座席シートを起こした。華生が住所を言うのを、彼は「はいはい」と生返事をしながら車道に戻る。
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