八章

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 悩みながらもタクシーで30分くらい足を休めていた華生は、公道の青い案内板に知っている地名があることに気づいた。 「あ、そこ右折です」 「いや、直進で大丈夫ですよー」 「……そうでしたっけ」  地理感覚にそれ程自信があるわけではない華生は、道のプロであろう運転手の言うことを、半信半疑ながらも受け入れる。  しかしそれが甘かった。 「?」  よくあるロードサイドのホテルのこっそりした入り口を、タクシーは躊躇なく通り抜けてしまう。 「あの、お金が家に帰らないと払えないと言いましたよね?」 「いや、貴女のタクシー代を払ってくれるって連絡があったからー」 「そんなことが……」  華生が反論しようと身を乗り出すと、もう彼が小汚い笑顔を浮かべながら近付いてくる。 「待っていたよ、華生ちゃん」  タクシーのドアが自動で開く。早く出て行けと言わんばかりに。
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