八章

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二つ年上の兄が、はにかみながら「妻になるんだ」と紹介してくれたのが唄子だった。 女神が人間界に降りてきたかと思った。 その容貌、髪、声、総てが完璧だった。とても、夜の街で働いていた女だなんて、思えぬ程に。 自分と生まれも育ちも同じの、ちょっと気が優しいのだけが取り柄の兄に、どうしてこんな美人の妻が貰えるのか意味がわからなかった。 仲睦まじい二人に激しく嫉妬した。かたや自分の妻は会社の上司にあてがわれた平々凡々の女、不公平にも程がある。 やがて兄は、交通事故で呆気なくこの世を去った。葬式の場でさめざめと泣いている唄子の隣にいると、悪魔が囁いた。 これは神様からの「プレゼント」だと。
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