八章

19/41

1327人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
唄子は、頑なに夫の伸一に操を立てた。 3桁になるかならないかの数の男に足を開いていた癖に、今になって何故自分を拒むのか分からない。 頑固な唄子だったが、「だったら娘に代わってもらおうか」と言ったらあっさり堕ちた。 自分の腕の中にいる唄子はどんな技を使っても悦ばず、最後まで反抗的な眼をしていた。 次第に身体も弱っていき、夫の後を追うように彼女ら旅立つ。俺に心を許すことのないまま。 それならば、娘に責任を取ってもらおう。  途中でうすうす気付いていた。彼女が唄子に似ているのは外見だけ。握れば折れてしまいそうな唄子と違って、華生は図太く(したた)かだった。 それでも、諦め切れなかった。それくらい、欲しかったのは……唄子だった。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1327人が本棚に入れています
本棚に追加