八章

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時は一彬が鑑田と合流した頃に遡る。一彬のミニバンが大講堂の前に停まると、鑑田が直ちに助手席に乗り込んだ。 「早かったですね、混んでたでしょう」 「飛ばした」 一彬は人でごった返す道を切るように進む。 「華生に連絡は繋がったか」 「いいや、多分取り上げられてるね」 「笹野は……電話しても出ないだろうな」 歯を食い縛る一彬の横で、鑑田が冷静にスマートフォンを操作する。 「でしょうね……あ、大丈夫です。華生さん、ちゃんとGPSが付いた髪飾りを付けていったから」 一彬の顔に光が差した。 「……やるじゃないか」 「当然」 鑑田の眼は、(からす)の如く狡猾だった。
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