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玄関のドアを開けると、華生が「兄様! ただいま!」と瞳を輝かせた。
「華生!」
華生が飛び込むのが早かったか、自分が抱き締めるのが早かったかはわからない。
自分の腕にすっぽり収まる華生は、安心したように身体を預けている。一年以上触れていなかった彼女は、ここに居るのが自然だとばかりに、自分の背中に腕を廻した。
自然に口から、言葉が滑り出た。
「華生……愛している」
まだ肌寒い空の下で、華生が顔を上げてまじまじと一彬を見上げた。彼女の透明な瞳には、涙が滲んでいる。
「私も愛しています……一彬兄様」
眉根に皺を寄せて、不器用に口角を上げた一彬の顔が、華生の記憶に刻み付けられた。
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