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どのくらい時間が経ったかわからないくらい、華生は一彬の腕の中で目を閉じたままだった。
この腕に抱かれる日がまた来るなんて、思いもしなかった。相変わらずあたたかくて心地よい。
「……冷えているだろう」
仏頂面に戻った一彬が、家の中に入るように促す。
「あ、はい。今上がります」
左の靴を脱いだ華生は「痛っ」と叫んで顔を歪めた。
「あ……」
一彬が華生の左足に視線を落とす。泥にまみれ爪は無残に割れており、パンプスの中敷も赤黒い染みができていた。
「……」
「きゃっ!」
一彬は、華生の腰を抱えて脚を持ち上げる。横抱きにされた華生は目をパチクリさせた。
「もう片方、自分で脱げるか?」
「あ、はい!」
華生は手を伸ばして右足のパンプスも脱ぐ。一彬が屈んでくれたので、手を伸ばして靴を両隣に揃えた。一彬は彼女が靴を置いたのを確認すると、そのまま立ち上がって歩き出す。
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