八章

36/41

1327人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
「!」  一彬が華生の肩を掴み押し倒す。首筋を撫でられたかと思うと、そのまま服のボタンをスルスル外された。彼の思惑に気付いた華生は、慌てて暴れ始める。 「じっとしていないか」 華生は一彬に押さえ付けられながらぎゃあぎゃあと喚いた。 「ちょっと待ってください! 心の準備ができてないんです!」 「お前が動こうとするからだろう」 「じゃあもう動きません! ここで朝まで寝てます!」 「信じられんな、なんせ裸足で車を飛び出した女だ」 「それは、仕方なかったからで……」 「そうだな」 あっさり肯定され、華生が拍子抜けたように一彬の顔を見つめる。彼は彼女の傷だらけの足を愛おしそうに掴んだ。 「本当に……よく最後まで抵抗してくれたと思っている。そうでなければ、助けられなかった」 彼の唇が彼女の足の甲にちょんと触れると、彼女の腹部がぞくりと疼き始めた。  熱を孕んだ一彬と視線が交わされる。彼女はもう、抵抗などしなかった。 「華生……」  一彬が華生の上に覆い被さり顔を寄せる。華生は彼の首を手繰り寄せ、その唇を、奪う。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1327人が本棚に入れています
本棚に追加