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終章
春の風が洗濯物を干す華生のほおを優しく撫ぜる。場所は鑑田グループ本社に近いマンションのベランダだ。
一彬と華生は、彼女が柊聖と離婚して少し経ってから、嶋木の家を出た。そのまま半年くらい事実婚状態で生活していたのだが、最近ようやく籍を入れたところである。
「兄様、今日は天気がいいですよ」
華生は未だに夫を「兄様」と呼ぶ。最初は改めようとしたのだが、なかなか癖が抜けないので一彬に「俺であることに変わりはない。もう好きに呼べ」と諦められたのだ。
華生の夫は生返事をしながら、届いているたくさんの郵便物に眼を通している。
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