1327人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
郵便物をさばいていた一彬が、一通の白封筒に目を凝らす。
「どうしたんですか?」
華生が一彬の側に寄って行った。一彬は顔のパーツを中心に寄せて呟く。
「母だ……」
封筒には、知性を感じさせる綺麗な字で「渡利蔦江」と書いてあった。
華生は顔を強張らせながら、遠慮がちに尋ねる。
「何年くらい、お会いしていないんですか?」
「二十年以上会ってない、あの人が親父と離婚してから一度も」
一彬は封筒から手紙を取り出し、無言で目を通す。読み終えた彼のため息は深い。
「会いに来いとさ、お前を連れて」
華生は無言で頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!