終章

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郵便物をさばいていた一彬が、一通の白封筒に目を凝らす。 「どうしたんですか?」 華生が一彬の側に寄って()った。一彬は顔のパーツを中心に寄せて呟く。 「母だ……」 封筒には、知性を感じさせる綺麗な字で「渡利蔦江(わたりつたえ)」と書いてあった。 華生は顔を強張らせながら、遠慮がちに尋ねる。 「何年くらい、お会いしていないんですか?」 「二十年以上会ってない、あの人が親父と離婚してから一度も」 一彬は封筒から手紙を取り出し、無言で目を通す。読み終えた彼のため息は深い。 「会いに来いとさ、お前を連れて」 華生は無言で頷いた。
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