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「は、はい……」
随分とあっけらかんとした方だな……
華生は目の前でニコニコしている彼女にぎこちなく笑みを浮かべる。
「あの、一彬兄様……いえ一彬さんと、私が結婚したのはご存知だったのですか?」
「あぁ、あの人が知らせてくれたのよ。元主人」
お父様も実はこまめに連絡を取り合っていたとか?
「二十年もお金しか寄越さず今になってねぇ。お金なんていらないのに」
予想通り筆不精だった。元妻は語気を荒げて叫ぶ。
「書いたら書いたで、『一彬が結婚するから報告しておく。会いたいだろう』って上から目線でムカつくわよねぇ!」
「あはははは……」
そっくりだ、長男に。
「でも、あの人にしては気を利かせた方よね。ほんっと瑛子さんもよく一緒にいると思うわ」
華生は、蔦江が嫌味を言う割には優しい顔つきをしていることに気付く。
「あの、大変失礼ですが……お父様を恨んではいらっしゃらないのですか?」
蔦江はきっぱり即答した。
「恨む? ぜーんぜん!」
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