終章

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華生のほおが桃色に染まる。自然と顔が綻んで、笑みが(こぼ)れた。 「はい……私も、一彬兄様を……愛しています」 野に咲いた白百合のような華生を見て、蔦江は思わず呟く。 「本当に、一彬には勿体ないわねぇ……」 インターホンが再び鳴る。蔦江が出迎えに行くとまもなく、「遅かったじゃない、あら何でそんな高いやつ買ってきたの? 馬鹿ねぇ広告の品199円のやつでいいのよ!」「俺が金を払うんだから構わないだろうが!」と所帯染みた会話が聞こえた。 兄様のこんな怒鳴り声は新鮮ね、と華生は笑いを忍ばせる。 「兄様、お帰りなさい!」 兄様が拗ねた顔で華生に命じた。 「華生、帰る支度をしろ。この人は長居すると、こき使うからな」 「何よ、アンタだけ帰りなさいよ」 「兄様、カップだけ片付けて帰りますからちょっと待ってください」 一彬が、「手懐けやがって」という目で母を睨んだ。
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