終章

11/12

1327人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
「一彬! また華生さんを連れて来てね!」 「やかましい! 俺も忙しいんだ!」 「また来ますね、蔦江さん!」 華生は嬉々として玄関に立つ蔦江に手を振る。 蔦江が見えなくなった頃、ぶすっとした一彬が華生に聞いてきた。 「あの人は余計なことしか言わなかっただろう」 「あらそんなことないですよ? 楽しかったです」 華生が澄まし顔で答えると、一彬は小さく舌打ちをした。 「ねぇ兄様、私蔦江さん好きです」 「それは気のせいだ」 一彬は食い気味で断言する。しかし華生の心を変えるには遠く及ばない。 「もう兄様は」 華生は屈託ない笑みを浮かべながら助手席で姿勢を正した。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1327人が本棚に入れています
本棚に追加