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「一彬! また華生さんを連れて来てね!」
「やかましい! 俺も忙しいんだ!」
「また来ますね、蔦江さん!」
華生は嬉々として玄関に立つ蔦江に手を振る。
蔦江が見えなくなった頃、ぶすっとした一彬が華生に聞いてきた。
「あの人は余計なことしか言わなかっただろう」
「あらそんなことないですよ? 楽しかったです」
華生が澄まし顔で答えると、一彬は小さく舌打ちをした。
「ねぇ兄様、私蔦江さん好きです」
「それは気のせいだ」
一彬は食い気味で断言する。しかし華生の心を変えるには遠く及ばない。
「もう兄様は」
華生は屈託ない笑みを浮かべながら助手席で姿勢を正した。
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