三章

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「あの、世津子さん。私にもお茶いただいていい?」 「は、はいもちろん!」  世津子は自分の仕事を今思い出したかのように台所に戻って茶を注ぐ。彼女は華生に「ありがとう」と言われた後、その場を逃げるように去った。  冷えたほうじ茶を飲む華生に、風恒は蛇のようなねちっこい目を向ける。 「華生、お前見合いしたんだってな」  耳ざとい。  華生が心底嫌そうに顔を歪めた。正直彼女は風恒と会話をするのが好きではないが律儀に答える。 「はい、しました」 「鑑田の坊ちゃんが相手らしいな」  風恒は自分も坊ちゃんの癖に鑑田を見下すような言い方をする。 「そうですね」
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