三章

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「鑑田には、お前の相手なんて役不足だよ」 五月蝿(うるさ)い人、勉強嫌いの癖に誤用の多い言葉を適切に使ってきてそれがまた腹立たしいが聞き流す。 「そうね。鑑田さんは素敵な人だった。私程度の器量じゃもったいないわ」 「家柄もな」  華生の弓形の眉が釣り上がった。声の棘を露わにしながら反論を重ねる。 「……私は嶋木の娘です」 「娼婦(しょうふ)の娘の癖に」 風恒が揶揄うように言った瞬間、彼女が手に持っていたコップを強くテーブルに打ちつけた。彼女は朱く興奮した顔で、金切り声で叫ぶ。 「母の侮辱をしないで!」
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