三章

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 確かに華生と一彬との出会いの場は風俗店だったが、まだ彼女の身は生娘のままだ。  自分に真っ直ぐな憎悪をぶつける華生を鷲掴む風恒の眼に、おぞましい熱が宿る。 「蛙の子は蛙って言うだろ。試してみてやろうか。お前の身体に、汚らわしい血が流れているかどうか」 「あ!? い……いやっ!」 華生の細い首を、風恒が舌でべろりと舐めた。華生の身体は上から下まで鳥肌に覆われる。まなじりには薄っすらと涙が浮かんだ。 「身の毛がよだつ」という言葉を、彼女はその身で味わう。 「離してください!」 華生の拒絶の言葉は風恒には逆効果だった。 「よく跳ねるじゃないか。さあ首から下はどうかな……」 華生が先程叩きつけたガラスのコップを掴んで投げようとした瞬間だった。玄関の無機質なインターホンが場の空気を削く。風恒の注意が音に向いた隙に、華生は渾身の力を込めて彼を突き飛ばした。 「一彬兄さま!」 華生は玄関に駆けて行く。一彬が玄関の扉を開けるや否や、彼女は躊躇なく彼の胸に飛び込んだ。
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