三章

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明くる日、鑑田は大学の講義室で友人と昼食を取っていた。同じゼミの同級生が、机で母の手作り弁当をつつく彼の前に現れる。 「鑑田ー」 「あぁお疲れ。お前も昼ごはん?」 「違うよ、お客さん」 彼が親指で入口の扉にもたれかかる金髪の男を指す。鑑田の友人はギョッとした。 「何だアイツ、ヤンキーか?」 当の鑑田も、記憶の片隅にもいない青年に目を凝らす。 「知らない人だな、誰だろう」 鑑田は箸を置いてロックだかパンクだかの身なりをした男の正面に立った。身長は変わらないにもかかわらず人を見下ろすような立ち方をしているが、些細なことで不快感を出す鑑田ではない。 「……初めまして、鑑田です」 「ハジメマシテ、俺は嶋木風恒。華生の兄です」
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