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「……はい!」
華生は開いた朝顔のような微笑みで玄関を出る。その足は踊るように軽やかだった。
一彬兄様と前みたいにちゃんとお話しできるなんて、今日はいい日になりそう!
送迎の車に乗り込むと、笹野という白髪の運転手が穏やかに声を掛ける。
「華生さん、ご機嫌ですね」
「ええ! 一彬兄さまとお話しできたから!」
「華生さんは、一彬坊っちゃまと仲良しですからね」
老齢の笹野は三十過ぎの一彬を坊っちゃまと呼ぶ。華生にはそれが可笑しくて仕方がない。
「さぁ、行きましょうか」
「お願いしますね!」
火傷しそうな夏空の下、鼻歌混じりの華生を乗せた黒塗りのクラウンは、鑑田との待ち合わせ場所に走る。
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