三章

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車に揺られて三十分、待ち合わせ場所のスポーツ公園に到着し、華生は鑑田に「着きました」とメッセージを送った。 「ありがとうございます笹野(ささの)さん。行って参りますね」 「楽しんで下さいね、華生さん」 笹野は華生に手を振りアクセルを踏んだ。華生はメッセージが読まれたことを確認し、辺りをきょろきょろと見回す。 「華生さん!」 テニスウェアを着た鑑田が華生を迎えに来た。白いポロシャツと青いズボンが、爽やかな印象の彼によく似合っている。 「鑑田さん! テニスウェアがよくお似合いですね」 「そうかな? 華生さんに言われると嬉しいな」 目元を赤くする鑑田の反応が新鮮で、華生の心が少し浮き立ってしまう。 「きょ……今日はお招きいただいてありがとうございます」 「こちらこそ、来てくれてありがとう」 二人ではにかみ合っていると、鑑田の背後から彼と同じ年頃の人たちがひょっこり顔を出した。 「この人が華生さんか?」 「すっげー可愛いな」 「ほんと、お人形さんみたい」 数人の思わぬ賛辞に、華生は戸惑いの表情を浮かべる。すると鑑田が優しく華生の肩を抱いた。 「口説くなよ、俺の婚約者だからね」 「……!」 華生の身体が硬直する。電池が切れた機械のような彼女を見て、鑑田が少し心配そうに顔を覗き込んだ。 「……調子に乗り過ぎたかな」 驚いたけど、嫌ではない。 「そ、そんなことないです!」 「良かった」 身体を離してホッと胸を撫で下ろす鑑田は、女慣れした風ではない。 「嫌味なんだよお前はー!」 鑑田は同級生から少し乱暴にど突かれて苦笑している。 ……嫌われない体質? 無邪気な笑顔は、とても好印象。
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