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二時間ほどテニスを楽しんだ後、華生は鑑田の車に案内される。銀のボディの普通の国産軽自動車だ。鑑田は手際よく助手席のドアを開ける。
「華生さん、乗って?」
「ありがとうございます。では……失礼致します」
華生は緊張した面持ちで助手席の椅子に腰を下ろした。
「さぁ、行こうか」
鑑田が運転席に乗り込みシートベルトを締める。
「免許、持ってらっしゃるんですね」
「うん、車は従兄弟が昔乗ってたのを貰ったんだ。就職したら、自分で好きなのを買いなさいってさ」
鑑田の柔和な横顔は、線がスマートで端正だ。
「あの、そういうキチンとした格好も素敵ですね」
「そうかな」
スーツではないがチャコールのパンツに落ち着いた黒いジャケットを合わせた鑑田は、学生にしては少し大人びて見える。
「おろしたてなんだ。華生さんに褒められるなら着てきて正解だったな」
また、顔が少し染まった。そういう素直な反応は、心を擽られてしまう。
……一彬兄様のこんな表情も、一度くらい見てみたい。
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