三章

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白い調理着を来た精悍な青年、名前はわからないが小学生の頃確かにこんな顔の同級生がいた気がする。 「あぁ、突然ごめんね。俺、生瀬(なませ)。中学卒業してからここで見習いしてるんだ」 生瀬は華生の凍り付いた表情には気づかないのか。他意の無さそうな笑顔で話しかけてくる。 「……華生さんの苗字は嶋木ですよ?」 鑑田の不穏な反応でようやく生瀬は慌てて口を押さえた。 「え? 悪い気づかなくて。もしかして、何かあったのか? あのときも急に転校したもんな」 鑑田はぽかんと首を傾げる。 「華生さん、どういうことだい?」 言い逃れはできない。生瀬は完全に華生を憶えているし、「はなお」なんて被りの少ない名前で別人だなんてとぼけるのは不自然だろう。 風恒兄様に、してやられた。 「あの……生瀬くん、鑑田さん、本当に……ごめんなさい。体調が優れないから……帰らせて……いただきます」 華生は二人の顔も見ずに廊下を疾走する。 「きゃっ!」 華生は仲居の驚いた顔も無視して玄関の下駄箱を勝手に開け、自分のパンプスを取り出しストラップを嵌めずにそのまま扉を引いた。 「待って華生さん!」 鑑田の声も聞こえない振りをする。幸いにも駅近くだったためタクシーが至る所にたむろしており、一番最初に目に付いたものに乗り込むと「すぐに出してください!」と懇願した。
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