三章

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決して安くないタクシー代を払った後、華生は勢いよく嶋木の家の玄関を開く。閉じる時にバシンと乱暴な音がしたが構いやしなかった。何かに当たらないと気が済まなかったのだ。 リビングのドアノブを回すと、風恒がソファにだらし無く寝っ転がって携帯ゲームをしている。 「おう、早かったな」 白々しい。 華生はギロリと風恒を睨みつける。 「なんだ怖い顔をして」 華生の声は地の底から湧き上がっているかの如くふつふつと煮え滾っていた。 「……何てことをしてくれたの」 「何が?」 風恒はゲームの画面から目を離さない。華生の声が鋭さを帯びてくる。 「あの店に私の小学校時代の同級生がいるって知ってたのでしょう!?」 「……だから?」 華生がヒステリックに怒鳴った。 「私が嶋木家の本当の娘じゃないことが知られると困ると言ったのは風恒兄様でしょう!」 風恒の返答には、温度というものがまるで無い。 「ああ、確かに言ったな」 「兄様は嶋木家のことなんてどうだっていいの!?」 「まぁ、潰れちゃ困るが」 「今日のことで一彬兄さまの面目は丸つぶれよ! どう責任取ってくれるの!」 華生のリビングを破壊するかのような金切り声。風恒の気怠い雰囲気が一変した。
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