三章

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「きゃっ!」 突然近付いてきた風恒が華生の腕を掴んで乱暴に引き倒した。そして床で受け身を取った彼女の上に躊躇なく馬乗りになる。 見上げた風恒の顔は能面のようだった。彼の下になった華生の声が上擦る。 「な、何をする気なんです?」 「……お前はいつも一彬兄様一彬兄様だな」 華生はカッとなって吠えた。 「私は一彬兄様と契約をしているんです!」 風恒は皮肉に口元を持ち上げながら、華生のほおを手でなぞる。 「お前大した女だよな。妹気取りで兄様兄様と一彬兄貴にひっついて」 (したた)かだと言いたいらしい。華生はムキになって言い返した。 「一彬兄様は七年前路頭に迷っていた私を助けてくれたんです! 妹のように慕って何が悪いの!?」 悪びれる様子のない華生の態度に業を煮やしたらしい、ついに風恒は怒号をあげた。 「……同じ兄なのに俺を見ないその眼が気に入らない!」 風恒が華生のワンピースのボタンを引きちぎり、乱暴に胸を鷲掴みにする。華生が絹を裂くような悲鳴を上げるのも構わず、彼は華生の首筋に噛み付き、身体中をいやらしく撫でまわし始めた。
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