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華生の悲鳴が虚しくリビングに響く。
「いや……! 一彬兄さま!」
「まだ言うか!」
風恒が華生の口を塞ぐ寸前、開けっ放しだったリビングの扉の前に人影ができた。
風恒を無言で見下ろす一彬の眼は、血が繋がった弟を見る眼ではなかった。彼は爛々とした眼で風恒の胸ぐらを掴み華生から引き剥がした。
「痛っ……」
言葉を発するその口に一彬の握り拳が飛ぶ。頭を床に叩きつけ、右に左に容赦なく拳を打った。
助けられた当の華生が恐怖で震えているのをよそに、ただ無言で弟をなぶり続ける。こんな一彬は、見たことがない。
彼の拳を納めたのは、父の怒鳴り声だった。
「止めろ一彬! 弟を殺す気か!」
一彬は邪魔をするなとばかりに成親に視線を向ける。
「何があったんだ…!」
成親は、部屋の隅で左肩を剥き出しにしてブラジャーをずり下げている華生を見て全てを察した。非難の目は顔をぶくぶくに腫らした風恒に向けられる。
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