三章

31/33
前へ
/264ページ
次へ
翌朝、長い髪を梳かしている華生の部屋を世津子がノックする。 「どうぞ?」 世津子は昨夜何があったのか知らないので、ニコニコしながら華生に一礼する。 「華生さん、お客さまが玄関でお待ちです」 「ありがとう、すぐ行きます!」 華生は玄関に向かい自分の客の顔を見て言葉を失った。 「おはよう華生さん。気分は良くなった?」 昨日料亭に放ったらかして帰った鑑田が、妙に爽やかな笑顔で立っている。手に持っているのは華生が彼の車に忘れたテニスウェアが入ったバッグだ。華生はしどろもどろで謝罪を述べる。 「鑑田さん、こ、この度は何てお詫びしたらよいか……」 「あの後、一彬さんに電話したんだ」
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1332人が本棚に入れています
本棚に追加