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「それでも! 彼女はこれだけの結果が出せるのです! どうか、彼女を大学受験させていただけませんか……!」
自分の娘でもないのに必死に頭を下げる担任に、華生は困惑する。
「せ、先生? い、良いのですよ? 私も大学に行きたいと思っている訳ではありませんから……!」
「嶋木さん。貴女の成績でそんな事を言うのは、大学に行きたいと思っている人に失礼だ」
穏やかに窘められた華生は「申し訳ありません」と小さく言った。
「……嶋木さん。貴女はもういい。少し、お兄さんと二人で、話をさせてくれないか」
「え? 先生と兄様とで……ですか?」
一彬が来るなり追い詰められた子鹿の如く縮こまっていた先生が二人で何を話すのだろうか。心配しつつも、華生は彼の言う通りに教室を出る。
ピシャと華生が扉を閉めた後、重い空気がさらに色濃くなった。
先程は華生が多少空気を緩和していたが、一人で一彬と対峙すると自分に一気に圧が集中してしまう。彼の黒々とした眼力に屈しそうになりながらも、担任は汗を光らせながら言葉を絞り出す。
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