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一彬が談話室を出て間もなく、鞄を抱えた華生が側に寄って来た。
「ごめんなさい、一彬兄様。忙しいのに来てもらって」
「俺を寄越すだけの成績を出したのはお前の努力の結果だろう」
一彬がぶっきらぼうに褒めると、華生は花開くように微笑む。
「はい」
「……帰るぞ。帰りにアイスクリームでも食べるか? 笹野に寄り道させよう」
割と寛容な性格の笹野は、こういうことにもノリがよい。
「行きたいです! 一彬兄様も一緒ですか!?」
華生の目がきらきらと輝いた。
「……そうだな」
一彬はあまり甘い物を好まないが、そんな子どものように無邪気な表情を前にして「車で待っているから笹野と二人で行ってこい」とは言えない。
「やった! 早く行きましょ!」
華生が一彬の手を引く。離さないと言わんばかりにしっかり握られた手を、一彬は振り解くことができない。
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