1331人が本棚に入れています
本棚に追加
二日後の夕方、弘海を乗せた笹野の車が嶋木家の玄関に停まる。
「お帰りなさい弘海!」
瑛子が嬉しそうにスーツケースを抱えた息子に駆け寄る。
「ただいま母さん、笹野さんがお土産を持ってくるから運ぶの手伝って」
「あらあら」
瑛子は少女のように軽やかな足取りで車に向かって行った。
「お前、バイトは良いのか」
「兄さん、今日は休みか?」
渋いグレーのポロシャツを着ている一彬に弘海が訊ね返す。まだスーツを着てない頃から共に過ごしているのに、この兄はカジュアルな出で立ちをしているとどうも違和感がある。
「まぁな」
「年中無休じゃないようでなによりだよ。バイトは無理言って休みにしてもらった」
「無理? 何か大事な用事でもあったのか」
弘海が苦笑紛れに言う。
「用事というか……なんか俺がいない間に色々あったらしいからな」
察し顔の一彬の肩を叩き「少し休んだら話をさせてくれ」と言い残すと、弘海は自室にスーツケースを運びに行った。
最初のコメントを投稿しよう!