四章

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次に弘海が向かったのは、末弟の部屋だった。 「風恒(かぜつね)、入るぞ」 返事をする前にドアを開けて、弟の青アザまみれの顔を見て絶句する。 「いやー……派手にやられてるな」 本来は美男子の部類なのに今や影もない。風恒はムスッとしたまま黙りこくっていた。 「父さんが言ってたぞ。一彬兄さんに半殺しにされてたって」 風恒は、いつもと変わらず緩く構えた笑みを浮かべる兄に静かに問いかける。 「……理由は聞いたのか」 弘海の口元が若干下がった。 「少しな」 「怒っているか?」 弘海は天井に目線を遣りながら腕を組む。少しばかり考えた後、答えを見つけた彼の表情に笑顔は無かった。 「否定はしないが、今更俺が言うのもな」 兄は持ち主の許可も取らずに机の椅子にどっかり腰を下ろす。
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