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「……華生のこと、好きだったのか」
風恒は鼻で笑って兄の質問を一蹴した。
「好きとかじゃねーよ。血が繋がってない女が一つ屋根の下に住んでて何も感じないのか? 弘海兄さんは」
弘海は風恒の目元が赤いことに気付くが言及しない。
「俺は歳が離れているからな、あいつは可愛い妹だよ」
弘海が普通に否定すると、風恒はベッドの上で起き上がって喚いた。
「だったらおかしいだろ! 一彬兄貴は! 一回り以上歳が離れてるんだぜ!? 恋愛対象になんてならねーよ!」
「……恋愛に年齢差なんて関係ないことくらい、お前もわかるだろ」
彼の激情は止まらない。
「知ってるに決まってんだろ! それでも俺の方が華生に釣り合ってる! 華生はあんな仕事人間の何がいいんだ!」
全てを吐き出して、風恒は慌てて口を閉じる。しかし覆水は盆に返らない。
風恒は思わず身震いする。彼を見下ろす弘海の顔も、声も、氷点下だった。
「……お前二度と、華生に触るなよ」
弘海が椅子から立ち上がる。兄が静かに部屋から出て行った後、風恒は手近な所にあった雑誌を壁に叩きつけた。
華生なんて好きな訳がない!
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