四章

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華生の通う女子校は嶋木の家から歩いて最寄り駅まで行き、さらに新幹線に乗り継いで一駅行かなければならない。笹野の車が空いていれば乗せてもらうのだが、一彬らの仕事の送迎の必要がある場合は華生は始発に乗って通学している。 「平気だよ、()ってみたいんだ」 華生は薄々気付いてきたのだが鑑田はこういうとき結構強引だ。 「高校の文化祭なんて大学のと比べたら大したことないですよ?」 「そんなことないよ。華生さんは何をするの?」 「私のクラスは、餃子を焼きます。私は売り子をします」 「じゃあ絶対行かなきゃ! 楽しみにしてるね!」 華生が返事をする前に通話が切れてしまう。 華生からしてみれば餃子の売り子なんて面白くもなんともない。チャイナ服を着るわけでもなし。変に期待されてないだろうか、そんなこと思うのは自意識過剰か。 割引のチケットを余分にもらっておかなきゃ…… 一彬兄様の分と、鑑田さんの分。
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