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体育館が見えてきた頃、小刻みに息をする華生の背後から声がする。
「オネーサン!」
急いでるのに、と思いつつ華生は振り返った。だらっとしたズボン、ピアスと風恒と似たような格好をした男の二人組、あまり真面目そうではない。
「どうしました?」
「ねぇ、道迷っちゃったんだけど、案内してくれない?」
手に校内案内のパンフレット持っているのに。ナンパだろうか。
「ってか超かわいーね! 芸能人かなんか?」
ナンパらしい。高校生だからって間に受けると思われては困る。華生はわざと硬めの声を出す。
「私、人を待たせているので……」
「何処ですか? 僕も一緒に案内します」
さっき聞いたテノールの声がしたと同時に、華生の身体が横に引っ張られた。鑑田の手が華生の肩をしっかりと抱いている。
「彼女の連れです」
鑑田は相手が口を開く前に自分から説明を始めた。華生が見上げる彼は決して柔和な笑顔を崩さず、相手に絶妙な圧力を掛けている。
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