四章

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「平気です。今日は一人で時間潰そうと思ってましたから」 「……そうなの?」 「はい、嶋木になってから……友達って中々できなくて」 華生が視線を床に落とす。 「私、学校が家から遠いから友達とたくさん話す機会ってあんまりないんです。習い事もしてましたし」 そうでなくても嶋木家の養女になった時から、華生には嶋木家以外の人間と深く関わるのを避ける癖がついてしまった。人間嫌いではない。しかし婚姻を結ぶ家に相応しい妻になることを課せられた自分には、他人と何かを楽しむ余裕などないと思ってしまうのだ。 「人に対して壁を作ってしまうんですよね、だからこういうときどうしていいか分からなくて」 自嘲の笑みをこぼす彼女に鑑田が寄り添う。
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