四章

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「何で駄目なの。結婚って幸せになる為にするものだよ」 華生は鑑田との考え方の相違に戸惑い立ち尽くす。 違う。結婚は、自分の幸せなんかの為にするものじゃない。嶋木家への、一彬兄様への恩を返す為にするものだ。そこに自分の意思なんか、関係ない。 そう思っていた筈だけど、鑑田さんと未来を歩むのは、途轍もなく幸せなことだと疑えなくなっている。 華生の口元がはらりと綻んだ。その辺の女子高生とは一画を為した、傾国の姫かと思うような嫋やかな微笑に、鑑田は両目を奪われる。 「鑑田さんは……きっといい旦那様になりますね」 華生に顔を向けられた鑑田は、初々しく染まったほおを持ち上げた。 「……華生さんも必ずいい奥さんになるよ」 そろそろ行こうか、と鑑田が華生の手を握った瞬間だった。
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