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「一彬兄様!」
華生が鑑田の手をパッと離し、ダークスーツを纏った男のもとにすっ飛んでいく。
「華生、そこに居たのか」
片手に餃子のパックを抱えた一彬は華生の頭を撫でながら、自分の右手に視線を落としたままぼうっとしている鑑田に目を遣った。
「鑑田さん、君も一緒だったのか」
「あ……はい。華生さんに会いたかったので」
「遠かっただろう。車で来たのか?」
「いいえ、今日は新幹線で」
「そうか。家まで送って帰ろうか? 華生を迎えに来たついでで悪いが」
華生の目がキラキラ輝いた。
「ありがとう兄様! 鑑田さん、そうしましょう?」
「……一彬さんのご迷惑でないなら、お願い致します」
折り目正しく頭を下げる鑑田の返事は、少し歯切れが悪い。しかし二人が彼の異変に気付くことは無かった。
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