四章

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文化祭が終わると、華生達は学校の来客用の駐車場に向かう。 「いい車ですね」 鑑田は一彬の青いミニバンを見て感嘆した。 「君の家はもっといい車を持っているだろう」 「そんなことないですよ、失礼します」 華生は助手席、鑑田は後部座席に乗り込む。 二人がシートベルトを締めたのを確認すると、一彬はサイドブレーキを引きエンジンを掛けた。 「兄様、音楽掛けて良いですか?」 「鑑田さんが構わないなら掛けるといい」 「僕はいいよ、華生さんが好きな曲知りたいな」 華生がグローブボックスからCDケースを取り出す。 「結構沢山入ってますね。音楽お好きですか?」 鑑田が華生が捲るケースを後ろから覗いた。 「俺はほとんど聞かん。全部華生のだ」 「これにしようっと」 華生が入れたCDから流れる「YES!」という黄色い女の子の掛け声に、鑑田は耳を疑った。40人くらいいる女性アイドルグループの最新曲だ。ポップなメロディを嬉々として聴いている華生に鑑田は尋ねる。 「華生さん、アイドル好きなの?」 華生は鼻歌混じりに即答した。 「はい! 可愛いじゃないですか!」 「意外だね……もっと大人っぽい曲が好きかと思ってた」 というか見るからに騒がしいアイドルソングなんて聴きそうにない三十代男性が運転する車内から、可憐な女の子の声が流れてくるのが奇妙で仕方がない。当の運転手は眉一つ動かさず車を運転していた。
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