迎え

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迎え

 会社の飲み会でかなり酔っ払い、飲み会前に『帰れそうになかったから迎えに行くから、電話をして』と言ってくれた妻の言葉に甘え、電話をした。  駅にいることを告げて通話を終える。その数分後、妻から帰宅はどうするのかとラインメッセージが入った。  さっき電話をしたことを告げると、そんな電話はかかってきてないと言う。見たら確かに、妻ではなく友人に電話をかけていた。  こんな時間に『迎えに来て』なんて、迷惑極まりない。それでも友人は快く俺の言葉に応じてくれた。  多分今頃こちへ向かっていることだろう。すぐに電話をして、間違いだったことを告げないと。  そう思い、さっきの番号にかけ直そうとした時に、とても重要なことを思い出した。  あいつは先月事故で死んでいる。  繋がる筈のない電話。通話するなどあり得ない相手。  違う。あいつの訳がない。多分違う相手にかけているんだ。  それを確かめようとスマホに目をやった瞬間、背後から聞こえてはいけない声がした。 「お待たせ。『迎え』に来たよ…」  返事ができない。振り向けない。  なぁ? 今からお前に電話をして、間違いだったと訴えたら立ち去ってくれるか?  祈るように、俺は、この世にはもういない、けれど背後から声をかけてきている相手の番号に電話をかけた。 迎え…完
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