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「何を言ってるんですか、野々原さんのぶんも含まれているに決まってます」
「あ、すみません」
心外だとばかりに鼻を鳴らす早坂に、三佳は苦笑をもらす。そりゃそうか、個数も個数だけれど、一人だけ悠々と食べるだなんて、いくら早坂とて良心も痛むだろう。
「じゃあ、ちょっと行ってきますね」
「気をつけて」
「はい」
そうして三佳は、メモ紙にある老舗和菓子店『あずま屋』へと足を向かわせた。出がけに「歩いて十分とかかりませんよ」と言われたとおり、ほどなくして店へ着く。
早坂が言うには、ここの塩大福が絶品なのだそうだ。十個なんてペロリですよと、うっとりとした表情で言っていたので、本当にそうなのだろう。三佳も楽しみに思いながら五人ほど順番待ちをしている客の列へ並び、自分の順番を待った。
事務所へ戻ると、さっそくお茶を淹れて一休みだ。初めはパクパクと実に美味しそうに塩大福を口に放り込んでいく早坂に唖然とした三佳だったが、一口食べてなるほど、これは何個でも入る。
そういえば、もっとたくさん買っていく人もいた。サイズも小ぶりでちょうどいいし、大ファンの早坂ならずとも、三佳でも軽く五個は平らげられそうだ。
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