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「んん……ん」
しかし、そんな三佳の胸中などお構いなしに、さわさわと頬を撫でる刺激は一向に止む気配がなかった。
徐々に寝苦しくなった三佳は、さらに乱暴にそれを払いのける。けれどやはり、高級な鳥の毛で撫でられているような滑らかな感触は続いた。
「んもう、なんだべさ!」
とうとう我慢ならなくなった三佳は、それを思いっきり掴む。
意識はかなり覚醒しているが、まだ目は開けたくなかった。瞼が鉛のように重く、なかなか持ち上がらないのだ。
「……ん?」
けれど、あまりの手触りの良さに、三佳は否応なしに薄目を開けさせられた。
鳥の毛でもなければ、とことん手触り感を追及した毛布でもない。何かこう……今までに触ったことのない不思議な感触に、それが何なのか確かめてみたくなったのだ。
「うぎゃぁぁぁっ――!!」
そのとたん、三佳は大きな悲鳴を上げた。
目の前にあったのは、白い大きな犬の瞳。しかも、なぜか早坂のオッドアイと同じ色をした瞳が、三佳の悲鳴をもろともせず、じっとこちらを見つめていたのだ。
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