■0.これが事のはじまりなわけで

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 早坂から衝撃的すぎるカミングアウトを受けたあと、物件についていろいろ説明してもらった際、今は入居者はいないということで、予備知識として真っ暗であることは頭に入っているつもりではいた。  けれど、想像するのと実際に目で見るのとでは、抱く印象にかなりの差が生じる。わかっていたとはいえ、そこは不気味に十分目立つ。 「しかも角部屋でしょ、北側二階の。怪談とかオカルト話でもよくあるじゃん、そういうところって溜まりやすいって。もうほんと……ああ、もう……」  それに、出る(・・)という部屋は三佳の独り言のとおりだ。  早坂の話では、北側や二階といった場所にピンポイントに溜まったり出たりするわけではないという。が、やはり角部屋は好まれるそうだ。……何にって、霊にだ。  三佳も心からそう思う。  へっぴり腰になり、懐中電灯で足元を照らしながら鉄製の階段を一段一段、十分に時間をかけて上っていくたびに感じるのは、素人感覚ながら目的の部屋へ近づいていくにつれて空気の種類が明らかに変わってきたことである。
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