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――『今夜は記念すべき野々原さんの初体験となるわけですから、当然、無理強いはしません。ですが、部屋の中には必ず入ってくださいね。そこで僕の到着を待つんです。まあ、それは僕のタイミングになってしまうんですが、でも心配はいりません。時間をかけるのはあまり好きではないのでね。さくっとやっちゃいますよ』
物件説明の際の早坂の言葉が、耳に鮮烈によみがえる。
聞こえ方によっては、真っ当なほうの夜的なニュアンスに聞こえなくもないけれど。でもこれはあくまで〝危険物件〟の〝掃除〟であって、早坂が言ったとおり、三佳は彼が彼のタイミングで姿を現すまで部屋の中で過ごさなければならない。
早坂の話にもあった。
早坂が先陣を切って乗り込んでいったとしても、向こうは(つまり霊は)、彼の力を察して一時的に避難するだけで、しばらくすると元どおりになってしまうと。
それでもダメ元で「外ではダメなんですか?」と尋ねたところ、返ってきたのは「ふふふふ……」だったので、三佳は早坂の意図するところを推し量るしかなかったのだ。
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