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想像するに、この部屋を拠点にしている霊はアパート全体にまで力を及ぼすほど強力なのだろう。その話を聞いたとき、三佳はどんだけだよ! と声高に思った。
また早坂は、今夜の物件は三佳のデビューに打って付けだと言った。けれど、ドアを開け放つなり圧倒されるような重い空気に息苦しさを覚え、どこが!? とも心底思う。
真っ暗で、部屋のそこかしこから漂う負の空気。
それは、ともすれば正気を保っていられなくなってしまいそうなほど濃厚で重厚で、そして――大きな悲しみが感じられる。
「これじゃあ、いくら家賃が安くても住み続けられないよ……」
玄関先に佇んだまま、三佳はたまらず独り言ちた。
最寄り駅からも徒歩七分と、そう遠くもなく、加えて徒歩圏内にはコンビニや、小さいながらもスーパーにドラッグストアまであって家賃三万円は、喉から手が出そうなほど魅力的な物件だ。間取り図を見ても、ひとり暮らしをするには十分な広さだし、部屋の中の写真にあったキッチンにバストイレといった水回りも綺麗で充実していた。
でも、この空気に中てられては、出ていきたくなって当然だ。
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